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2010年4月12日 (月)

『若者奴隷時代』(山野車輪著・晋遊舎MOOK)

カテゴリが「アニメ・コミック」になってないのは、そっちでくくるのはちょっと違うかなーという気がして。確かに漫画なんだけど、敢えて「書籍・雑誌」に入れました。「社会」っていうカテゴリがあれば、そっちなんだろうけどね。

で、読みました。『若者奴隷時代』。読み終わって思ったのが、「やっと、これが言える時代になったんだなあ」ということ。

社会人になりたての頃、同じようなことを言ったらもう、年長者はもちろん、同年代のやつらにまでメッタメタに叩かれました。てか、思いっきり白い目で見られた。

当時、私は給料激安の会社に勤めていて(それでも正社員だった)、所得税と健康保険と年金を差し引くと、手取りは10万円切ってたんです。しかも、翌年からはそこに住民税が加わると言われ……。

「100円しか掛け金払ってなかったヒトが私と同じくらい年金貰えるって、おかしくね? しかも、その私は給料の1割近い掛け金をぶんどられるってどうよ? 年金制度、絶対ヘンじゃね? 年寄りだけがトクしてんじゃね?」

いや、当時はこんな言葉遣いじゃありませんでしたけどね。

ただ、二十ン年前の時点で、私の同年代の人間の多くが「将来、年金制度は崩壊する」と確信していたと思います。子供の数が減っていくのも、年寄りが増えすぎて彼らに国を食いつぶされるであろうことも。それを表立って口にできなかっただけで。不用意に言っちゃうのは、私のような「空気読めないバカ」だけ。

まあ、温度差もあったんだと思います。手取り10万円を切る月収というのは、同年代の中では激安でしたから。バブル期には及ばないものの、当時の大卒女子の初任給平均は14万くらいだったかな。男子はもっと高かったし。

やっぱ10万円から1万円引かれるのと、14万円から1万円引かれるのとじゃ、大違いだもんね(いや、正確な年金の掛け金はもうちょっと低かったと思うんですが。諸々の天引き分の合計金額しか覚えてないもんで。何しろ四半世紀も前っすから)。フトコロの痛み具合にも、腹立ちの具合にも差があって当然だし。

当時、一番問題だったのは「おかしい」と思っても、それを発言する場が全くなかったことでした。インターネットなんて影も形もなかったし。もしもあのころ、2chとかツイッターとかがあったら、ぽつぽつとでも「おかしい」と言う人が現れて、「そう思ってたのは自分だけじゃなかったんだ」と思う人も出てきて、二十年後である今の状況が少しは変わっていたのかなあ……。

などと、過ぎたことを言ってもしょうがない。それより、この先のこと。

やっぱり、若年層が真っ当な職に就けない、スキルを身につけられないというのは問題だと思うのですよ。でも、企業が抱えていられる正社員の人数には限りがある。

定年を以前と同じ55歳に戻したらどうだろう? 昔はそれが当たり前だったんだし。いやいや、それじゃたいした効果はない。いっそ、50歳定年というか、正社員でいられるのに年齢制限を設けたらどうだろう? 正社員でいられるのは50歳未満だけ。

で、現在、介護職に就く人間が足りないんだから、50歳で定年になった正社員は全員、介護職に転職すればよろしい。だって、50歳といえば親の介護で仕事を辞めなきゃいけない人がぽつぽつと出てくる年齢だし。職に就こうと就くまいと、介護に関わらなきゃならなくなる。だったら、働きながらスキルも身に付いて一石二鳥じゃん!

そして、介護職として働いている50歳以上には、将来、自分と家族が介護施設に入所する必要が生じた際、入所優先権が与えられるということにすればいい(介護施設の順番待ちって、気が遠くなるような数字だったりするんですよ……)。

それでも現在の仕事を続けたいなら、正社員ではなく非正規で続けて、親を介護施設に入れるときに、長~い順番待ちをするか、高額な費用を負担するという選択すればいいだけのこと。

というか、「介護職が足りないから若者に」っていう発想がすげーイヤなんだよね。若者である必要ないじゃん。50歳以上じゃ体力が足りない? でも、家庭内で介護を担うのは中高年女性なんだよ? それが「若者」である必要はどこにもない。ただ、既得権を持つ人々がいやがって、若者に押しつけようとしてるだけなんじゃないの?

むしろ、仕事に就けない若者を全部介護職に回しちゃったら、将来、「介護以外のスキルのない社会人」ばかりが増えて、それこそ国がつぶれるんじゃないの? 人数の少ない若年層にこそ、いろんな仕事をやらせるべきなんじゃないの?

……ということを20代、30代は言いにくいだろうから、敢えて50歳に近い私が言ってみました。

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