文化・芸術

2009年10月30日 (金)

ボーダーライン

昨日は午後から都内某所でオシゴトだったので、午前中は両国まで阪本トクロウさんの個展を見に行きました。

↓阪本さんの個展「共鳴」
http://www.gallery-momo.com/index.html

今回は、すーんごく大きな田園の絵と海辺の絵があって、どっちも前に立ってると吸い込まれそうでした。……モノカキにあるまじき稚拙な表現でスミマセン。でも、ホントにそんな感じだったの~!

なんていうか、ほんとにその風景の前に立っているような感じ。いや、決して写実的な絵じゃないんですが。写実的だから吸い込まれそうなんじゃなくて、すげーヲタクな表現で申し訳ないんですが、自分が二次元キャラになってアニメ絵の中に入っていくような……。

どんなに写実的絵であっても、それが人の手によって描かれたものであるとき、私たちは「すごーい! 写真そっくり! ホントに写真みたい!」なんて台詞を口にします。或いは、実物大の写真や解像度の高い画像を見て、「ホンモノそっくり!」とか。

でも、それは、「これは写真じゃなくて絵画」「これは実物じゃなくて写真」と認識しているから出てくる台詞なわけで。どんなによくできていても、私たちは「現実」との間に線を引いて認識しているわけです。このボーダーラインに近ければ近いほど、「ほんものそっくり」と感じ、遠ければ「デフォルメされている」とか「全然似てない」とか、或いは「ヘタクソ!」とか感じる。

阪本さんの絵は、この「現実」とのボーダーラインが巧みに消し去られているんじゃないかな、と思ってみたり。だから、明らかに写真でも現実の風景でもない、人の手で描かれたものの前にいるのに、現実の自分との境目がよくわからなくなって、吸い込まれそうな気がするのかな、と。

それと、描かれている風景が「今」だとはっきりわかるから(構図そのものは20年前にも各地にあったであろう田園風景だったり、海辺だったりするんですが。でも、これは「2009年の日本」だとわかる)、余計にそう思うのかもしれない。

そんな感じで、とにかく、大きな二枚の絵が印象的でした。あ、他もすごく好きだけど。でも、あの感覚はあの大きさでないと気づかなかっただろうなあ……。

阪本さんの個展は11月14日までです。あの不思議な感覚は画像や印刷物ではわからないと思うので、ぜひ!

2009年7月 3日 (金)

阪本トクロウさんの版画展

清澄白河のキドプレスというギャラリーに、阪本トクロウさんの版画展を見に行ってきました。

清澄白河なんて、ずーーーーっと前に球体関節人形展を見に行ったくらいで、ふだんはまるっきり縁のない場所。土地勘なんぞ当然あるはずもなく、そぼ降る雨の中、「ホントにこっちでいいの?」と不安にさいなまれつつ、キドプレスを探しました。

ところが。地図に記載されている場所にあったのは、運送会社。でっかい倉庫とたくさんのトラックの群れ。とても画廊があるとは思えません。

でも、住所はあってるし……。

しょうがないので、守衛さんらしき人に「キドプレスっていう画廊を探してるんですけど」と尋ねてみると。

「ああ、ギャラリーね。そっちにエレベーターがあるから。6階行って」

ええええええええええええ!? あるんですかっ!? 運送会社の建物の中に画廊が!?

しかも、そのエレベーターっていうのが、コンテナとかを運搬するような超でっかいやつ(以前bk1の倉庫見学ツアーに行ったとき、似たようなものを見ました)。扉の開閉は自動じゃなくて、「閉」ボタンを手動で押さないとダメってやつ。

でも、ちゃんとキドプレスはありました。それに、同じ6階には別の画廊も入っていたり。

いや~、なんていうか、辿り着くまでがちょっとした探検気分でありましたよ(笑)。

で、阪本さんの版画。これまでの作品展で目にした構図が版画になっていたんですが、なんだか不思議な感じでした。たとえば手描きの作品を現在の風景とすると、版画って現在から見ている過去の風景、みたいな感じなんですよ。

古いアルバムを見ているような、或いはドラえもんの道具で過去の一部分だけ持ってきたような。

現実の風景と見る人のの間にカメラと時間が介在したのが写真だとすると、人の手で描いた絵と見る人の間に銅版と時間が介在しているのが版画なのかな、と思ってみたり。

そう考えると、版画って、単体で見るよりも原画とセットで見たほうがより面白いのかも。

展示されているのが8点だけだったのが、ちょっと残念でした。もっといっぱい見たかったなあ(初めての版画展だそうなので、点数が少ないのは当たり前なんでしょうけれど……)。

[本日の食卓の話題]
ギャルゲの音響プロデューサーの意外なオシゴトについて(←ご主人が音響やってるという友人から聞いたネタ。ウチの息子、この手の話が好きなんだよなー)。