ボーダーライン
昨日は午後から都内某所でオシゴトだったので、午前中は両国まで阪本トクロウさんの個展を見に行きました。
↓阪本さんの個展「共鳴」
http://www.gallery-momo.com/index.html
今回は、すーんごく大きな田園の絵と海辺の絵があって、どっちも前に立ってると吸い込まれそうでした。……モノカキにあるまじき稚拙な表現でスミマセン。でも、ホントにそんな感じだったの~!
なんていうか、ほんとにその風景の前に立っているような感じ。いや、決して写実的な絵じゃないんですが。写実的だから吸い込まれそうなんじゃなくて、すげーヲタクな表現で申し訳ないんですが、自分が二次元キャラになってアニメ絵の中に入っていくような……。
どんなに写実的絵であっても、それが人の手によって描かれたものであるとき、私たちは「すごーい! 写真そっくり! ホントに写真みたい!」なんて台詞を口にします。或いは、実物大の写真や解像度の高い画像を見て、「ホンモノそっくり!」とか。
でも、それは、「これは写真じゃなくて絵画」「これは実物じゃなくて写真」と認識しているから出てくる台詞なわけで。どんなによくできていても、私たちは「現実」との間に線を引いて認識しているわけです。このボーダーラインに近ければ近いほど、「ほんものそっくり」と感じ、遠ければ「デフォルメされている」とか「全然似てない」とか、或いは「ヘタクソ!」とか感じる。
阪本さんの絵は、この「現実」とのボーダーラインが巧みに消し去られているんじゃないかな、と思ってみたり。だから、明らかに写真でも現実の風景でもない、人の手で描かれたものの前にいるのに、現実の自分との境目がよくわからなくなって、吸い込まれそうな気がするのかな、と。
それと、描かれている風景が「今」だとはっきりわかるから(構図そのものは20年前にも各地にあったであろう田園風景だったり、海辺だったりするんですが。でも、これは「2009年の日本」だとわかる)、余計にそう思うのかもしれない。
そんな感じで、とにかく、大きな二枚の絵が印象的でした。あ、他もすごく好きだけど。でも、あの感覚はあの大きさでないと気づかなかっただろうなあ……。
阪本さんの個展は11月14日までです。あの不思議な感覚は画像や印刷物ではわからないと思うので、ぜひ!